Monday, February 05, 2007

渡部昇一・渡部玄一『音楽のある知的生活』

渡部昇一・渡部玄一『音楽のある知的生活』
「第一章 音楽がわが人生にやってきた日」の父親の「音痴からの出発」が、「戦前の日本」の「音楽のない社会」に関する追憶で興味深い(本当に「音楽」がなかったかどうかはともかく「音楽のない社会」として捉える感性は存在していた / しているのだし)。
あと、実の父子のリレー・エッセイだ、ってのが少し面白いかな。

ものすごく素朴な文化帝国主義的視点が侵略された側から肯定的に表明されている事例、にしか思えないので、いわゆるトンデモ本だろうと思ってたのだけど、渡部昇一という人はたいへん有名でオエライ人らしい。

素晴らしい渡部昇一先生に関する情報サイトです
渡部昇一の「100人の指導者たち」
渡部昇一 - Wikipedia

まだまだこういう人たちやその少し下の世代が現役じゃないか。大丈夫か、僕は(あくまでも自分のことだけ心配しておきたい)。
「知的であること」とは「断言すること」らしい(「逡巡すること」かと思ってた。)。
正直気持ちが悪い。
引っ越してから10日間ほどネット環境がなくなるらしい。

------------
以下はメモ:
モーツァルトの良さは猿でも分かるらしい(42、140)。モーツァルトを聴くと、鶏は濃厚な卵を産み、赤ん坊もすやすや眠るらしいけど、謡曲を聴くと赤ん坊は泣き出すらしい(140)。情報源に対するリテラシーが働いていない文章は学者の文章じゃないと思うし、ただ情報を収集することは「勉強」(141)とは言わないのではないかと思う。

素晴らしく成熟したアメリカ社会では、クラシック音楽の分かる玄人以上の人間がお金持ちになって、ぽっとでの新人にお金を与えるなどのアンバランスなことはなされないらしく、そうれらが、一生、音楽のある暮らしを楽しむためには必要らしい(50)。

「音楽家にとって真のステータスとは、コンクールで賞を取ろうが取るまいが社会で必要とされ、そして愛され、生涯音楽家として暮らしていけるということだと思うからだ。」(52)

民謡の歌詞を覚えている学生はみんな成績が良かったらしい(55)。

「純粋音楽」(57)というのは、どうやら器楽のことらしく、器楽こそが「クラシック」らしい。

メンデルスゾーンの『ヴァイオリン・コンチェルト』は、通の間では「メン・コン」といって、初心者が聴いて初めて音楽的感動を覚える曲として有名らしい(59)。「通」ってなんやねん。

会話の声の高さは教養と社会階級に反比例するらしい(63)。そんな意見(『知的生活』という本の著者のハマトンという人の言葉らしい)を引用してどうすんねん。

と思ったら、この渡部昇一という人は、このハマトンという人の本を掘り起こして影響を受けて『知的生活の方法』という本を出したら、すごく反響があったらしい。

この人は西欧コンプレックスを払拭できているらしい(95)。

僕もあんましないと思うけど、僕は西欧に関して無知だから西欧コンプレックスを持っていないのかもしれない、と思ったりする時もある。

「一説によると、ハイドンは、愛好家よりも音楽の専門家、指揮者や作曲家の間で評価される傾向があるという。私のような素人が超スピードでハイドンに達したのは珍しいらしい。まずもって音楽の神様のお導きと言うべきか。」(65)
なんてナルシスティックな親バカなんだろう。

「教養の没落」に接続すること

「日本人の私がハンガリーの田舎で、ドイツの貴族だったという婦人と、ロマニの演奏するシュトラウスの『美しき青きドナウ』を、欧米各国の名だたる蔵書家たちの前で踊るという、夢のような出来事」(99)も経験したらしい。ロマニとはジプシーのことらしい。

良く分からないのだけど、「今」(この本は初版が2002年)、スピリチュアル系統の音楽が元気で、その代表格はホイットニー・ヒューストンらしい。

作曲に関しては、十二音階が終焉を見せてしまったらしい(116)。

僕はこの本をとても面白く読んだけど、つまり、僕は枝葉末節につまづきがちな人間だ、ってことなんだろうなあ、と思った。他にもっと直裁に切り込める通路があるに違いないのに、こんな本に時間を使ってしまった。面白くて。

音律の話を始めて「自然倍音率」という単語を出すなら(119-120)、平均律と純正律のトピックも出すべきだと思う。学問とは真理ではなく文化ではないか、と思うので。なので、僕には「日本の文化的水準」(129)という言葉が良く分からない。

「ドイツ語は教養層のシンボルだった」(131)らしい。

この人(父親)は鹿鳴館を復活させるべきだと考えているらしい(133)。すごいなあ…。

ジャズでもトランペットや和音が使われているように、クラシック音楽は、普遍的な良き道具を創り出したらしい(119)。なんて素朴な文化帝国主義的視点なんだろう。この人たちの「世界」はシンプルで狭すぎる。「他の世界」に対する想像力が極めて粗悪で表面的に過ぎる。驚くべきことに、この本は21世紀に出版されたものだったりする。「モーツァルトが消えないことを望む」のは「モーツァルトの持つ普遍性ゆえ」(128)ではないと思う。

雛祭りにはブランデンブルグ協奏曲が似合うらしい(139)。

日本の相続税は高すぎるので10%にすべきらしい(174)。西洋音楽遍歴はミニ・メセナに終着駅を見出すものらしい(179)。なんて右翼なんだろう。

911を経てもこういう人もいるのだなあ。いしはらしんたろう都知事に褒められると嬉しいらしい。

No comments: