Wednesday, February 14, 2007

烏賀陽(うがや)弘道『Jポップとは何か―巨大化する音楽産業』 東京、岩波書店、2005年。

烏賀陽(うがや)弘道『Jポップとは何か』
ところどころ「手作業のほうが細やかな音楽が作ることができるという思考」とか「政治権力の癒着と腐敗を弾劾するスタンス」とかが見えるのは、なんだかなーと思わなくもなかった。でも勉強になるのでかなりメモした。

JポップのJに「Jのファンタジー」(日本が世界と肩を並べるようになった、というファンタジー)がこもっている、というのはキャッチーに分かり易くて良いなあ。
で、そういう見解を持って、1)技術のデジタル化 2)マスメディアの変化(テレビの影響=CMタイアップやドラマタイアップと、歌番組の影響) 3)消費文化の変化(「自己表現」の大衆化と渋谷文化の浸透) をまとめて、音楽市場としての日本を数字や統計を多用して描き出す、と。

勉強になるなあ。
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Jポップの登場と変化と衰退:80-90年代にかけて日本社会に訪れた社会背景・文化背景の変化を通じて解読
:技術革新(アナログからデジタル)
:新しいマスメディアの登場(インターネット)
:消費文化の転換(「モノから文化へ」)

1.Jのファンタジー
:「日本のポピュラー音楽世界に肩を並べるようになった」というファンタジー

2.デジタル化
→音楽再生環境の変化→「音楽の大衆化」
→音楽製作環境の変化→音楽制作の機械化、自動化→音楽の大量生産=消耗品、商品としての音楽、「個性(音の個性)の貧弱化」(60-64)

3.テレビがもたらした変化
1978年 CMタイアップソングの大ヒットと「ザ・ベストテン」の登場(とサザンオールスターズのデビュー)

「テレビ= ×聴覚メディア ○視聴覚メディア」
視聴覚メディアとしてのテレビが(ファーストハンド・メディアとして)ヒット曲生産に関係するようになった。


Jポップ時代の幕開け:Jポップ産業複合体の成立:「ポピュラー音楽産業」「広告代理店」「テレビ(マスメディア)」(93)

4.消費文化の転換
「モノから心へ」という消費性向の転換=「自己表現」の商品化
音楽による自己表現の商品化(カラオケ、バンドブーム)と、パルコ文化(渋谷文化)の全国への浸透


Jポップは「自己表現を実現するための商品」の一つとして存在、Jポップの内実は「渋谷系」だと理解された。

「自己愛ファンタジー」(154-)
:ナルシシズム消費(自己定義のための消費行為)の中にポピュラー音楽も入った。
:音楽産業は「消費者はどんなうたを歌う自分がすきなのか」を先回りして探り、そのようなうたを商品化しようとすることになった
:自己愛ファンタジーとしてのJのファンタジー:それさえも「外国と肩を並べた日本のポピュラー音楽を愛好する自分を好ましく感じる」「自分も外国と肩を並べたかのように感じる」という消費者の自己愛的な思考を先読みしたマーケティングの産物かも?

5.日本の音楽市場
世界第二位の音楽消費地
しかし極端な輸入超過型、国内市場依存型


メジャー系レコード会社の契約期間が短いことが多い(173-174)
市場の均質性が高い(言語・民族がほぼ共通、USでは細分化されている)、国内市場が大きい=国外で自国の音楽を売る動機がない(175-178)
「消費財としての音楽流通経路」はある、「公共財としての音楽流通経路」は未熟
価格の多様性がない(178-181)
FM局の数が少ない=公共財として音楽にアクセスする経路が少ない
等々

6.Jポップ産業の挫折、Jポップ景気の終了
1998年 オーディオレコード生産金額の最高記録6074億9400万円


6年連続で減少(三分の一以上減少)
2004年 3773億6900万円
(通信カラオケもドラマ・タイアップもなかった1988-89年の出荷額と同レベル)

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