Thursday, February 15, 2007

Kahn, Douglas. "Ether Ore: Mining Vibrations in American Modernist Music."

Kahn, Douglas. "Ether Ore: Mining Vibrations in American Modernist Music." Hearing Cultures Essays on Sound, Listening and Modernity. Ed. Veit Erlmann. Oxford: Berg, 2004: 107-130.
(この書き方であってると良いなあ。)
読むのが遅かったのはその存在を知ったのが秋だったからであった。初めてDougにメールした時、チベットの神学の勉強をしていると言ってて「もしやこの人は研究分野を変えてしまったのではなかろうか。」と思ったのだけど、このシンポジウムの準備をしていたらしい。
デーン・ルディア(Dane Rudhyar)(作曲家よりも占星術師として有名みたい。初耳。)という人の、チベット・ヒンドゥー教をappropriateした、エゾテリックな、ブラヴァツキー等の神智学的な音響世界観を、当時の時代背景の中に読み込んでいくという論文。
ルディア自身の言葉は20世紀初頭にMusical QuarterlyやMusic Timessにけっこうのせられたらしいのに、ルディア自身の言葉はほとんど引用されていない、という、たいへんDougらしい論文。たぶん数ヴァージョンを経て掲載された完成稿だと思うので、これは自覚してやってんだと思う。たぶんルディア自身の言葉は面白くないんだろうし、当時のコンテクストの幾つかをあぶりだすことが目的なんだろう(と思っとこう)。

なので、とりあえずは、当時のコンテクストとしてDougがあぶりだしていることをメモしとこう、となったのであった。

「19世紀末-20世紀初頭のオカルティズム(神智学、ブラヴァツキー、ヒンドゥー教等々)」
:それらを「西洋芸術音楽(不協和音が増大してきた協和音中心の音楽)」の基礎付けとして流用するレトリックの登場

「19世紀以降の音響学の発達とその浸透」
:「自然倍音という科学的事実」を「音楽における倍音システム」の基礎付けに使用する、というレトリックが登場

「後のアヴァンギャルド(分子の振動が、振動して音を発する世界を確保する、ケージの音響世界観)の先駆けとなるレトリックの抽出」
:「a sound and all sounds」のレトリックの抽出(そして、これが、オカルト的な「根源と絶対」のレトリックとの親和性が強い)


"... ethereal thinking was too well suited to a musical cosmos for musicians to let go of it." (Kahn. "Ether One: Mining Vibrations in American Modernist Music." 110)

中川:オカルト的な言説は「音楽的なコスモス」の言説とリンクさせやすいものだった。新ピタゴラス主義とか新プラトン主義の流行ってのもあるけど、オカルト的な言説が「音楽のコスモス」言説を賦活した、って側面もあるに違いない。

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